豊かな国と貧しい国の境界
繁栄する国と貧困に苦しむ国。
経済成長をする国、しない国、成長が止まる国。
これらの違いはどこにあるのでしょう?
あるいは、なぜ新興国の多くは「中所得国の罠」にはまるのでしょう?
米国や先進国の未来と新興国の未来と考えるうえで、参考して頂ければ幸いです。
一般論のまとめ
①人口
経済成長に関係あるかはわからない
詳しくは過去記事をご覧下さい
http://etfsp500.com/archives/24038444.html
参考文献
②地理説
国家の繁栄と衰退に関係があるかは議論はわかれる。
過去記事 http://etfsp500.com/archives/25356080.html
ジャレド・ダイアモンド氏等はこの説を支持。
ダロン・アセモグル氏等は否定的。
個人的には一部支持(多少の影響はあるが、決定的な要因ではないと思っています)
③文化説
捉え方によってイエスでもあり、ノーでもある
文化説には、宗教、人種、言語、倫理、習慣、いろいろな説があります。
朝鮮半島や東西ドイツは、戦後分断されるまで、言語・民族性・文化・人種(地理的な条件も)など多くの面でほとんど同じでした。
しかし、分断後、元々の文化的・地理的な側面はほぼ同じだったにもかかわらず、経済成長は大きく乖離していきました。
米国のアリゾナ州とメキシコに分断された元々一つの都市だったノガレスもこの例に当てはまります。
私自身の今の考えは、ダロン・アセモグル氏等の主張に近く、
文化説も経済成長や国家の繁栄と衰退を説明するには弱いと思っています。
参考文献 国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源
④無知説
イギリスの経済学者ライオネル・ロビンズ氏が1935年に唱えた説です。
貧しい国も裕福な国もある理由は、私達が貧しい国を裕福にする方法は知らないというものです。
これは一理あります。
しかし、無知説も世界の貧困の一部を説明できるにすぎず、世界の不平等や経済成長の違いを説明するのは弱いと思います。
今日アフリカの指導者やエリート層は先進国のやり方を全く知らないのではなく、
自分たちの利益や地位を守るため、経済成長や国家の繁栄を促すよりよい方法を知っていても、導入しないというのが現状だと思います。
一般市民の方も収奪的な社会や財産権が危機に晒されているような社会では、わざわざ新しい技術を導入したり、開発するインセンティブがありません。
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ここまでをまとめると、
(影響はあるかもしれませんが)
今日の国家の繁栄と衰退、経済成長を決定づける
『最大の要因』は、人口・地理・文化・無知が理由ではないと考えます。
繁栄・経済成長する国家の条件
最も国家の繁栄と衰退を分ける条件。
そして、
持続的な経済成長を促す最大の要因は『制度』にあります。
①ある程度中央集権的である事。
→法律・生命・財産などの安全を保障するため。
これらは経済成長の最低条件となります。
②包括的な経済であること(またそのために包括的な政治が行われていること)
そして最も重要な条件は、
指導者層や一部の人のみが利益を得るような、
収奪的な政治による収奪的な経済が行われるのではなく、
包括的な政治と包括的な経済が行われることです。
適切な経済制度、特に私有財産と競争が保証されている場合に限られます。
そして制度から生じるインセンティブが持続的な経済成長を促します。
好ましい制度は、革新的なイノベーションを生み経済的な成功へ向かわせます。
抑圧的な制度は最終的な衰退、停滞へと向かいます。
収奪的な政治・経済体制下の特権階級の人々は国や経済の繁栄より自分の利益を優先します。
よりよいアイディア・方法があっても、自分の地位が脅かされるリスクをとりません。
創造的破壊を意図的に防ぎ、妨げ、搾取し続け、更に地位を守ります。
そうなると、その他のほとんどの人々にはインセンティブが生まれまず、停滞や衰退を招きます。
正直私の説明は少し下手だと思います(笑)。
ちゃんと説明しようとすると長くなりうまくまとまりません。
このテーマに関してより詳しく知りたい方は
国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 を参考にしてみて下さい。
実際はもう少し複雑です。
これらは、必ずしも2極論ではなく、
収奪的な政治の元、包括的な経済が行われているような国もあります。
また、ローマやベネチアのように、成長期には、比較的包括的な政治・経済が行われていたにもかかわらず、徐々に収奪的な政治・経済へと移行し、経済成長が止まり、衰退した例もあります。
流動的であったり反転する場合もあるので注意が必要です。
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中国について
ここからは個人的な見解です。
70年代アメリカや日本のように、人モノ金などの資源の効率的な配分が既に終了しつつあるため(経済成長の大きな要因)、今までのような経済の高い成長率を維持できるのか疑問視する声もあります。
参照 絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか
中国の場合は、必ずしも包括的な政治を行っているとは言えません。
故に今後イノベーションや経済成長が停滞する可能性もあると思います。
個人的には来年、鄧小平あたりから学び直してみたいと思います。
インドについて
中国以上に収奪的な政治、経済行われている部分が多く見られます。
例えば、カーストの影響で古くから権力者や、権力者とつながりのある企業が、優先して融資を受けたり、人を大量に集めることができたりします。またいろいろな許可を取りやすかったりもします。
一方で、新しいより生産的な企業が、銀行から融資を受けられなかったり、コネがない・懇意にしている企業と競合するなどの理由で許可や認可をとれなかったり、機械を導入できなかったり。人が集まらなかったりもしています。
収奪的な政府、政治、経済でも、一時的には経済を成長させることがたまにあります。
スペインやソ連等の国がよい例です。
ただ、その後、停滞を招きやがて衰退へとつながります。
資源の再配分はほぼ完了しているため、70年代のような経済成長が期待できないかもしれませんが、
イノベーションを起こすことによって成長は続けることは可能です。
農業から主要産業がより生産性の高い工業に移ったように、工業から生産性の高いハイテク産業へと、人、物、金などが容易に移動できること。
例えば、質の高い金融・株式市場や質の高い労働市場(教育水準の高さ・移民の質)を有していることなどは米国の大きな長所だと私は思います。
世界でも有数の成功例の一つの明治維新ですら、ペリー来航から近代化・先進国化するまで(日露戦争まで)の約50年も費やしています。
故に、すでに優れた包括的な政治・経済が根付いていている米国は(その長所を自ら失わない限り)
しばらくの間、制度が整っていない新興国に比べ、経済・政治的な優位性を保持続けると思います。
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川の流れのように
せっかく革命を起こし、収奪的な政府を打倒しても、新たな政府が再び収奪的な政治を始める事例も多々あります。
イギリスのように絶対主義から包括的な政治体制と変化した国もあります。
1974年、鄧小平は国連演説で以下のように述べていました。
未来はどうなるかわかりません。
そして、経済成長=株主の利益ではないことにも注意が必要です。
お詫び
長々と書きましたが、
毎日更新のブログでは、各テーマについて、
全体的に障りの部分しか紹介出来ず、申し訳なく思っています。
参考図書をいろいろ載せておいたので、興味のある方は是非読んで勉強してみて下さい。
他の多くの事例や反例、国々についても学べると思います。
まとめと感想
結局は、各国のそこで生きる人々と、
その指導者たちの選択にかかっていると思います。
適切に分散投資を続けていきたいと思います。
いつも本当にありがとうございます。
Source: S&P500ETF(VOO)に投資するりんりのブログ
米国・中国・インド未来について『経済成長を決定づけるのは〇〇』