【長期ってどのくらい】
私を含め、多くの投資家は「長期投資」という言葉を気軽に使います。
でも「長期」って、いったいどのくらいの期間なのでしょう?
株式市場の歴史は400年くらいありますが、
現実的に考えれば、「信用できるデータ」として、遡れるのはここら辺まで限界かと思います。
でも、これでは統計的に
①長期投資のデータとして信頼するには全然サンプル数が足りないわけですし、
(例えば、重複しない30年という期間はほんの数回分しかありません)
また、ほんの50年前と今とでは市場や投資家の姿、制度や法律、市場環境が今と大きく異なるように、
②年に1~2度株主が動くような時代のデータと、現在の毎日何度も高速で株式が取引される時代のデータを同じように扱っていいものか。
といった疑問や論点も残ります。
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【5年と言う期間】
かといって、1年では短すぎますし、5年くらいは同じ傾向が続くこともざらにあります。
2016年以降の米大型グロース株が良い例ですが、特定の戦略やファクターが市場を数年アウトパフォーマンスすることもあれば、
バリュー、小型株、モメンタム、クオリティー、低ボラなど、特定のファクターが「60ヶ月(5年)」以上市場平均をアンダーパフォーマンスすることは過去普通にありました。
では、10年ではどうでしょう。
【S&P500に10年投資をした場合のリターンを振り返る】
過去100年において、S&P500に投資を10年間投資した場合のリターンは、
およそ年率平均-5%~+20%(ドルベース・名目)の間で変化してきました。
平均するとだいたい名目ドルベースで10%、
インフレ調整後ドルベースで6%後半になりますが、
運が悪いと10年投資をしてもマイナスになる場合もあります。
もちろん、配当を再投資したり、下がった時に追加投資をすれば話は多少変わってきます。
【ベストな資産配分は変化する】
このようにS&P500といえど、好い時期もあれば悪い時期もあるので、
当然米国株とEAFE(米除く先進国)に分散する場合の効率のよい資産配分も、
時代によって大きく変わってきます。
S&P500と米国債を組み合わせて効率的フロンティアを表した場合も似たようなことが起こります。
10年単位でくぎってみても、ベストの資産配分、効率的フロンティアは大きく動きます。
10年単位で見た場合、
ベストの資産配分というのは環境によって大きく変わります。
ここ数年のように米国株絶好調・0金利、低インフレ
といった環境でベストな資産配分が、将来においてベストかどうかはわかりません。
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【一期間モデル・多期間モデル】
私は自分の投資期間を、「投資を始めた日から死ぬまで」と想定しています。
実際に死ぬ具体的な日付は(良くも悪くも)わかりませんから、
私は生きている間に資金が尽きる方が苦しいと思うので、
ギリギリ使いきっての「O」を狙うのではなくて、
多少の余裕を持って死んで良い、多少余すくらいでちょうどいいと思っています。
私の投資可能期間はまだ数十年あります。
私はこの数十年を「一つ期間」として捉えるのではなく、
「多期間モデル」で捉えた方が現実的ではないかなとも考えています。
実際、年金を運用するGPIFも環境の変化に応じて、目標の賃金上昇率+1.7%をできるだけ低リスクで達成するために、資産配分をだいたい5年に1度くらい見直しています。
通常のポートフォリオ最適化モデルは一期間モデルと呼ばれ、
現在一回きりの投資の結果としてもたらされる富の分布を何らかの意味で最適化しようというものです。
多期間モデルは将来の投資の組替えも考慮に入れ、全体として得られる富の分布を最適化しようとするものです。
このポートフォリオ最適化モデルはポートフォリオの組入比率を変数とすると非線形最適化問題として定式化されるため、 非常に扱いにくく現実的な問題において解を求めることは困難とされていたのですが
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この図の例では1年毎となっていますが、
①自分の投資環境やリスク許容度・投資可能期間・効用の変化
②インフレや金利など大きな市場環境の変化
に応じて、必ずしも「1年=1期間」とするのではなく、数か月~数年で「1期間」とするのがいいと思います。
株式や国債といった、利用可能な各資産クラスの性質もさほど変化しません。
まあ、現在の環境は稀です(笑)
でも、これが好例で、債券クラス扱い(期待リターンなど)が
「リーマンショック以降の低インフレ、低金利」環境と今とでは、
あるいは「利上げ前と利上げ後」では、大きく変わったと思います。
一方、1期間モデルでは、(多期間モデルを国内の機関投資家の期待リターンなどもそうでしたが)
国内債券のリターンがほぼ0%なのにも拘わらず、長期的な国内債券の期待リターンを採用して、2%前後として計算しているものもありました。
でも、過去10年それは現実に即するものではなく、国内債券に2%の期待リターンを求めて組まれたPFはおそらく10年と言う長い期間目標を達成することはなかったのではないでしょうか?。
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【人生は多期間モデル?】
結局、ただ何もしないで、リスク許容度の範囲内で全世界株式に一括投資を維持、に負けるケースがたたあります。
個人的には、めんどくさいのでご存じの通り、あれこれいじらずインデックス投資をしていますが、
この1期間モデルと多期間モデルは、運用やPFだけではなく、投資家自身の「人生」においても当てはめることができます。
投資や資産形成をするのが普通ではないかと思います。
市場環境の変化はもちろん、法律や税制、投資可能な対象など制度も変化します。
外国株に気軽に投資ができない時代や仮想通貨の登場など、投資機会、投資可能な対象も変化します。
自分自身の人生も、結婚・出産・転職・退職などライフステージの変化というものがあります。
今と10年後の環境が変化することを考えると、
今考え得るベストの資産配分が、10年後もベストとは限りません。
いくつか修正を行う必要がある場合があります。
複数期間における消費と貯蓄の意思決定などがあげれます。
山崎元氏も以前のトウシるにて、以下のようなことを語っていました。
「インフレ+高金利」といった世の中にでもならない限り今の方法が将来も「そこそこ以上に」有効であり続けるだろう
(日本の長期金利が2%を超えたら、次の方法を考え始めようと思っている)
2021年の「ほったらかし投資術」 | トウシル 楽天証券の投資情報メディア「ほったらかし投資術」という些か投げやりな名前のお金の運用法がある。正式な専門用語ではないし、オリジナリティーを主張したいわけではないのだが、筆者と投信ブロガーの水瀬ケンイチさんの共著である「ほったらかし投資術」(朝日新書、2010年刊)…
このようにその時の環境によっては、戦略を見直すことを示唆しています。
もし今後、日本の長期金利が2%を超えるようなことになったら、
現在の山崎元氏の推奨する「国内外の株式+現金(10年国債)」という基本戦略に、
国内債券が復活するかもしれません。
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私達の消費やリスクの選好、ライフステージも変化するから考慮する必要があるという事です。
長期資産運用・投資(多期間)を計画する時は、
ここが表現が難しいのですが、(あとで上手い言い回しを考えます)
規律ある投資は本当に大切ですが、
過去の自身の環境や投資環境における、「過去の自分の意志決定」に捉われすぎてもいけません。
私は以前、山崎元先生にこの点を指摘されたことがあります。
(実際には採用していませんが)最近では動的なポートフォリオ戦略やレジームシフト戦略について興味を持ち、かなり柔軟にそういう意見も受け入れられるようになりました。
現時点で今までの方針を大きく変えることは全く考えていませんが、
退職・結婚・制度の変化などがあった場合は、
柔軟に資産配分を見直す余地を残していきたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
米国株ランキング
もし興味のある方は少し難しめですが、「長期投資の理論と実践: パーソナル・ファイナンスと資産運」という本をお勧めします。
具体的なモデル等が載っています。
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Source: S&P500ETF(VOO)に投資するりんりのブログ
最適な資産配分を考える。【一期間モデル・多期間モデル】